具体化⇆抽象化
更新日:2022年6月14日
いきなりですが、
連続する5つの自然数のうち、
もっとも小さい数をnとすると、
もっとも大きい数は ① と表される。
このとき、
連続する5つの自然数の和は、
② (n+ ③ )と表される。
このことから、
連続する5つの自然数の和は、
小さい方から ④ 番目の数の
⑤ 倍となっていることがわかる。
という穴埋め問題があったときどう考えますか?
連続する5つの自然数って何?
って、まずは具体的に考えることが大事ですよね。
たとえば、
4,5,6,7,8とか、
11,12,13,14,15とか、
つまりは、そういう連続する5つの自然数のことか、というように。
こうやって具体的に考えることで、
何の話をしているのかを的確に捉えることが出来るわけです。
人間は、具体的であり、個別的であり、目に見えるものしか理解できんようになっとる。
英語でも、「わかった! 理解した!」ってとき、「I see!」って言うやろ。例えばイギリス人にとっても、「見える」と「理解できる」は同じ意味なんや(『見えないときに、見る力。』谷川祐基著)。
もっとも小さい数をnとすると、最も大きい数は、え~っと?
たとえば、もっとも小さい数が4だったら最も大きい数は8で、
4をnとしているから、5,6,7,8って4つ増えてるな。
つまり、n+4ってことか?
じゃあ、もっとも小さい数が11だったら、、、最も大きい数は15だから、
11をnとして15を表現するには、やっぱりn+4で合ってるな。
と考えを進めることが出来るわけです。
もちろん慣れてきたら、いちいち考えないでしょう。
でも、それは慣れていてどういう事を言っているか、瞬時に理解できているからです。
数学というのは学年が上がれば上がるほど、
どんどん抽象化(一般化)が進んで、どんどん具体的なことから離れていくので、
そういう意味では直感的に捉えることが出来ず、どんどん理解不能になっていくのは当たり前なんですね。
たとえば、3㎝、4㎝、5㎝という直角三角形は成り立ちます。
これをもっと一般化していくと、
a、b、c(斜辺)、の直角三角形は、
a²+b²=c²という『三平方の定理』が成り立ちます。
これをもっと一般化していくと、
a、b、c、aとbの間の角をθとした場合、
あらゆる三角形でa²+b²-2ab cosθ=c²という『余弦定理』が成り立ちます。
、、、どんどんワケわからなくなりませんか(笑)?
でも逆に言うと、このθに具体的な角度である90°を代入すると、
a²+b²-2ab cos90°=c²
a²+b²-2ab×0=c²
a²+b²=c²
というように、
直角三角形という具体的な三角形限定の『三平方の定理』に落とし込むことができますし、
aやbやcに3㎝、4㎝、5㎝、を代入すると、具体的な直角三角形になるわけです。

数学は常に抽象に向かっとるんや。
そして、人間は具体的なものしか理解できんようになっとる。
本質の追究も、抽象方向に向かう活動やろ。
学年が進むほど、数学が嫌いな生徒や数学の苦手な人は、どんどん増えていく。
抽象に向かうほど、理解は難しくなり、理解できる人は少なくなっていく。
抽象的なものを抽象的なまま理解するのは難しい。
けど、対策は簡単やで。
逆に言えば、理解するためには、具体化すればいいんや(同)。
つまり前提として、抽象的なものは理解できない(しにくい)というのがあり、
だからこそ、具体的に考えて捉えていくというのが大事なんですね。
もし問題がわからなかったら、具体化して理解しなはれ。
理解できたら、抽象化して考えなはれ。これが出題者たちのメッセージや。
誘導(問題)もそのようについとる。問題をつくっている先生たちも、
本当は、数学の本質は抽象性にあると内々感じとるんやないかな。
具体化と抽象化は、何回も繰り返してええんや。
もしまたわからなくなったら、もう一回具体化して理解すればええ。
ただし、数学的に論証するには、抽象化が必要や。
具体化と抽象化の繰り返しで問題は解けるようになっとる(同)。
反対によくない例としてやりがちなのが、
抽象的な状態できちんと捉えることが出来ていない(理解出来ていない)にもかかわらず、
解き方だけをコピーしてしまうことです。
曖昧なところがあるなら、具体化してしっかりと理解することが大切ですね。
あ、ちなみに最初の問題ですが―
連続する5つの自然数のうち、
もっとも小さい数をnとすると、
もっとも大きい数は ① と表される。
このとき、
連続する5つの自然数の和は、
② (n+ ③ )と表される。
このことから、
連続する5つの自然数の和は、
小さい方から ④ 番目の数の
⑤ 倍となっていることがわかる。
冒頭で説明したと通り、①はn+4と言えそうです。
4,5,6,7,8とか、
11,12,13,14,15とか、
で、具体的に考えてみてくださいね。
連続する5つの自然数は一番小さい数を基準に考えると、
次の数は+1、その次の数はさらに1大きいので+2というように1ずつ増えていくことがわかります。
つまり、一番小さい数をnとして考えるなら、
小さい方から、n、n+1、n+2、n+3、n+4になりますね。
和というのは足した結果の事です。
ということで、
n+(n+1)+(n+2)+(n+3)+(n+4)=5n+10
これを5でくくってあげると5(n+2)となりますね。
つまり②は5で、③は2となりました。
5(n+2)の(n+2)というのは、
先ほど並べた5つの自然数の小さい方から3番目の数ですね。
※たとえば一番小さい数が4だったら、(4+2である)6ということです。
5(n+2)とは5×(n+2)という意味ですので、
連続する5つの自然数の和である5(n+2)は、
小さい方から3番目の数の5倍になっていますね。
つまり④は3、⑤は5となることがわかりました。